失敗しないフランチャイズ経営
フランチャイズ本部の実力の差はいったいどんなところに出るのでしょう?
いろいろなフランチャイズ本部とお付き合いさせていただいた経験で感じる、FC本部によってもっとも実力差が出やすいところは、以下7つです。
(1)立地調査の精度
(2)売上予測
(3)利益予測
(4)商品開発力
(5)コンセプトカ
(6)競合店対策(7)スーパーバイジング
これらは、いいかえれば優良本部かどうかを見分ける壗準になります。
フランチャイズ・ビジネスを始めたいと考えているあなたにとっては、チェック項目となるものです。では、1つひとつについて、解説していきます。
フランチャイズのチェックポイント
立地調査の精度
前述のとおリフランチャイズ・チェーンは「立地産業」です。そのため立地診断は、他店舗展開するフランチャイズ本部にとって必須の技術であり、店舗展開のノウハウの核心と言える部分。つまり、本部として売上予測を一定の誤差の範囲内で留めることのできるノウハウがなければ、到底、多店舗展開などできるわけがありません。
多くのフランチャイズ本部が行なう近年の立地分析は、コンピュータのソフトを使って現状分析を行ない、これに近い自店舗データや予測されるマーケットデータを付加する「IT解析」が主流です。
この「IT解析」の結果をもとに、立地分析のプロとして経験のあるぶ門の担当者が現地へ行き、最終的な調査結果を算出します。
具体的な項目は、エリアの人口分析や所得水準、世帯数、年齢構成、時問帯・曜日別人口、購買傾向、文化、教育、交通、河川、競合を含むマーケットの環境、店頭通行人数、視認性、間口、交通手段など。
これらを、コンピュータ調査と現地調査によって、複合的に調べるのです。ちなみに、この中で、私が一番重要だと考えているのは競合を含むマーケット調査。その周辺エリアのマーケットの大きさ・繁盛店調査・同コンセプトとなりうるライバル店調査など、その業態の消費需要を把握する調査です。
フランチャイズ本部の立地調査のノウハウは、本部の実力を知る肝とも言える部分です。
契約前に各フランチャイズ本部における立地調査のやり方がどの程度なのか、つまり、現地調査をどのような方法で何日かけて実施するのか本部担当者に質問するようにしてください。
売上予測
開業前にフランチャイズ本部が開業後5年問の損益予測を捉示してきます。このとき、「毎年前年比105 %の売上高を達成する」などの数値が示されている本部は、はっきり言って危険です。
なぜなら多くのチェーン店の特徴として全店ベースでは売上高は上昇傾向にあるとしても、既存店ベースでは近年は下降傾向、良くて横ばいだからです。
にもかかわらず、本部が夢物語のような損益予測を出していないかどうかを確認するために、既存店の売。1こ推移は必ず確認するようにしてください。
飲食店の売L算出力法は。「席数×客単価=売L高」です。銀行の提出資料として暫定的な売上を算出する程度ならば構いませんが、もし、これのみで売上を予測しているとしたら、正確な売上予測の出し方としては不十分と言わざるを得ません。
正確な算出方法は、その出店エリアの周辺飲食店の売上を予想することです。そこで、まず一番の繁盛店にいき、実際に注文するだろうと思われる料理とドリンクを注文してみます。そこでのお会計が「平均客単価」です。少なくとも嘔日と週末の両方を調べてください。次にライバル店となりうるお店の調査も同様な方法で調べます。
この調査でのポイントは、ホームページ上では知ることのできない商品の味や、接客マナーなどの付加価値を知ることができる点です。
そして最後に周辺飲食店の同曜日・同時問帯の飲食需要(マーケット)を大まかに予測します。
この周辺飲食店調査のやリ力として、わざわざ食事をしなくてもできる裏ワザをお教えしましよう。やり方は簡単。そのお店に行き、店貝にこう言うのです。「次川大人数で予約をしたいのですが、最大で何人まで入れますか?」そして、実際の席内を見させてもらう。また、直繁盛店ならば、携帯電話で電話しているフリをしながら、「今、お店についたけど、どこにいるの?」など言いながら奥の席までいけば、大体のことは調査できます。
こうした足をつかったマーケット調査からそのエリアにおける飲食需要(=1店舗あたりの売上規模)と、自店と競合店の付加価値を比較しながら、白店舗の売上予測を立てていきます。
市場にはお客様とライバルしかいません!
必ず周辺エリアのお客様とライバルのことを調査してから白店舗の売上予測をするようにしてください。
利益予測
開業し、売上は当初のf定どおり推移しているのになぜか利益が出ない…。フランチャイズ加盟後、このような問題にぶつかる店舗が多くあります。なぜこのような問題が起こるのでしょうか?
思ったように利益がでない理由は大きくわけて3つあります。
1つ目の理由は人件費に関する問題です。つまり本部の3つていた通りの人件費に収まらないのです。コンビニを例にあげましよう。コンビニの収支シミュレーションの多くは当初からコンビニオーナーが1日16時間働くことを前提で計算されています。つまり、自分の代わりにアルバイトを使えば、その分人件費がオーバーしてしまうのです。また本部が算出している人件費比率は、その時間帯の理想本数で組まれている場合がほとんどです。と言うのは、実際アルバイトを雇用するケースでは、半勤務、2時間勤務などではアルバイトを採用できません。つまりその前後の時間分の時給が本部人件費には加算されていないのです。
2つ目の理由は原価に関する問題です。飲食店では得てして当初の収支モデルでは原価32パーセントと聞いていたのに、平気で35〜37パーセントにずれ込むケースが多いのです。これは、もともと数字の根拠がないまま32%と言っている本部と、食材破棄分を含めない理論値のみを伝えているケースがあるのが原囚。いずれにしても、このようなケースは非常に多いので、実際に加盟している他社のオーナー様に1創いてみる、もしくは直営店の直近3年問の損益計算潛の開示を求め、いつわりのない数字か確かめるようにしてください。
3つ目は販売促進費に関する問題です。飲食店の場合は、この勘定科目に「メニューブック代金」が含まれます。年3同メニュー変更のあるチェーン店では、1同のメニュー変更で約15〜20万円程度が加算されます。そのほかにも本部主導の販促戦略に加盟店は従わなければならないケースが多く、当初の収支モデル以上に販促費が上乗せになるケースが多いのです。
飲食店以外の業態でも、チラシをホスティングで配布するチェーン店では、チラシ代は販売促進費として計上されています。しかし、それを撒く人の人件費、ホスティング業者に依頼するホスティング業者代など、あえて収支計算上に計上していない本部が多いのです。つまりそれは、「労務問題の制約を受けない個人事業主であるオーナー自らが、勤務時間以外に撒きなさい」という、メッセージなのです。
これらの3点が積み重なり、予定の利益額に大きく届かないという顛末になるのです。売上予測は出店してみないとわからないことが多いもの事実です。しかしながら、経費而は実際の店舗の数字を調べれば、かなりllミ確にf測することができます。本部のウソを見抜き、しっかり計算の根拠を聞くようにしてください。
商品開発カ
フランチャイズ・ビジネスの場合、加盟店が自由に商品を開発して販売することはできません。本部の名前を背負って商売をするのですから、当然のことながら縛りがあります。
良くも悪くもこれがフランチャイズ・システムです。
市場では毎年のようにライバル店が新店をオープンさせます。するとあなたのお店のヒット商品も次第に囗新しさがなくなり徐々に売上が落ちてきます。その結果、集客のために価格を下げてしまうヶ一スが多い。
しかし、中には、価格競争とは無縁で、安売り販売をせずとも、多くのお客様が来店し繁盛し続けている飲食店もあります。こうしたお店に共通するもの。それは、お店独自のヒット商品。
ヒット商品の開発!これは繁盛店をつくる際に、とても重要な要素です。
チェーン店の場合はセントラルキッチン(集中調理施設)などで調理するケースが多く、どこもかしこも商品が似通ってしまうというデメリットがあります。そこで加盟したいフランチャイズ本部が、過去、いかに差別化したヒット商品を作ってきたのか、商品開発にどのくらいコストを投資しているのかを尋ね、その実力を見甌める必要があるでしょう。
コンセプトカ
商品コンセプトとは、この商品はどのようなものか、誰が使うのか、メリットは何なのかなどを、ひと言で言い衣したもの。いわば商品計画の根幹であり、出発点です。商品コンセプトのつくり方は…。
まずその商品は、どういう特性の人に販売する商品なのかを考える。次にそのターゲットのどのような欲求(ニーズ)を満たすのかを考える。最後にどのような方法(技術)でその商品を提供するのかを考えることです。
商品コンセプトを考える上で吸要な点はマーケッティングです。これからの時代のマーヶティングは、大量生産の経済下での「つくったものを売る」のではなく、「売れるものをつくる」といった発想で、お店側が消費者のニーズ、ウォンツを明確にし、それを満足させるように経営資源を組み合わせ、お店をコントロールしていかなければなりません。
経営の神様と呼ばれるピーター・ドラッカーは、「究極のマーケティングは、セリング(販売)を不要にするもの」と言っています。モノ余りの時代において、この概念をもって商品開発や販促計【由iを立てていかないと、場当たり的な対応になってしまうのです。
あなたにお願いしたいことは、本部のマーケティング担当者の話をよく聞き、本部の商品開発・販促計画・プロモーションなど、すべてコンセプトに対して整合性が取れているか確認すること。この視点でチェックをすれば、その本部の実力を判断できるはずです。
競合店対策
断言します。競合店は必ずでてきます!
優良本部の見分け方の1つは、この「競合店対策」がしっかりしているかどうかという点です。
競合店対策について多くの店舗での成功事例と長い経験の中での独自のノウハウを持っているかどうか。仮に商圏内に競合店が進出してきたときに、今までにどんな手を打ってきたのかについて、ぜひ聞いてください。優秀な本部ならば適切な打ち手をアドバイスしてくれるはずです。
しかし、ほとんどのフランチャイズ本部は、競合店が出てきても、具体的な対策を打つことができません。「キャンペーンチラシを競合店の周辺に配布しましよう」とか、「QSC ( =品質・サービス・清潔さ)のレベルをあげましよう」と、抽象的なアドバイスで終わってしまうケースが多いです。
競合店が進出してきた場合、本部主導で競合店との「強み」と「弱み」を明確にして、自店(チェーン)の強みを活かして、競合店に流れたお客様をとりもどす施策案を何種類か提案してくれるのか。業種業態によって対抗策はさまざまですが、まずは本部としてノウハウが確立されているかどうかという点を確認してください。
たとえば某宅配チェーン店の場合。競合店がオープンする前には『期間限定! ○○割引券付き』という販促活動を本部のアドバイスで行なっています。
しかも、実施は、点ではなく而で対抗する意味から、対象店舗だけではなく、近隣の店舗も巻き込んで実施するという、フランチャイズの強みを活かしたものになっています。
また、フランチャイズ・ビジネスを始めると、同業他社だけでなく、商圏環境の変化により、さまざまな業態と競合関係になることがあります。このような事態に陥ったとき、「本部がどのような支援をしてくれるのか?」、開業後の継続的な支援内容を確認してから加盟することをおすすめします。
スーパーバイジング
スーパーバイザーはフランチャイズ本部のトレーサビリティともいわれ、彼らのマンパワーの優劣で、当該フランチャイズ本部の実力をうかがい知ることができます。
ぜひ、本部担当者にスーパーバイザーの育成法について「5C+1P」を絡めながら質問してみましよう。えっ?「5C+1Pつて何?」ですって。説明しましよう。
フランチャイズの5C十IPとは?
5C+1Pとは、スーパーバイザーが総合的に加盟店をサポートしていくために、実際の業務遂行に対して必要な機能をまとめたものです。
●コンサルティング
加盟店の経営全般に関する経営指導
●カウンセリング
加盟店オーナーや従業員の精神面での相談に乗る
●コーディネーション
加盟店の要望に対して、必要に応じて町門家や他部門との調整を図る
●コントロール
加盟店がルールどおり運営されているかどうかを点検、統制する
●コミュニケーション
本部と加盟店問の双方向の情報のやり収りの仲なちを行なう
●プロモーション
加盟店独自で実施するセールスプロモーションの企画や実施支援
この「5C+1P」は屯要性が高いですが緊急性がないため、本部としても後回しにされるケースが多いのです。しかし、この機能なしでのスーパーバイジングは、実質的に不可能。必ず質問してください。
なお、スーパーバイザーは、直営店での勤務経験を持つ人材を登川する場合が一般的です。現場を知った。ヒで加盟店の経営指導にあたらせることを、本部としてマスト【must】にしているのがその理山。そこで現場経験がどのくらいあるかも、必ず確認しましよう。
最後にフランチャイズ・チェーンにとっては、統一イメージの維持が大叨となるため、スーパーバイザー業務の標準化が必要です。佃人の力最に頼って各人が自己流に指導してしまうと、加盟店からの信頼を損ねてしまうからです。
そこでスーパーバイザー業務の標準化に対して、次のような点を踏まえて仕組み化されているか質問してみてください。
☆スーパーバイザー活動の標準化推進。(スーパーバイザー川のマニュアルはあるのか?)
☆スーパーバイザー育成カリキュラムは本部にあるのか
☆スーパーバイザー行動管理システムは導入されているか
☆スーパーバイザーのための情報共有サイトなどは構築されているか
☆加盟店の成功・失敗事例共有のためのデータベースなどはあるのか
☆加盟店の経営指導をするうえで各穐基準の設定がされているのか
☆担当店舗の現状はできるかぎり「数値」で把握できる仕組みはあるのか
☆経営改善のプロセスを記録し、チェーンとして標準的な施策として体系化する仕組みはあるか
以上、8つの質問に対して5つ以上のYESが返ってくる本部は、スーパーバイザー業務を標準化されている優良本部と考えて問違いありません。
私が実際に見た、すごいスーパーバイザーと、駄ロスーパーバイザーの実例を紹介します。
まず、すごいスーパーバイザーは某大手企業のO氏です。O氏は当時、本部のスーパーバイザーをしながら、同ブランドを2店舗経営するオーナー社長。
そのため経営者視点を持っている唯一のスーパーバイザーだったのです。彼から教わったのはピーマンのヘタでした。
O氏の指導を受ける前まで、私たちはピーマンの仕込みをするときはヘタを捨てていました。この現場をO氏に見られたとき、「食べられる部分まで捨てるなんてもったいないじやないか」と指摘を受けました。
「こうやってピーマンの軸をにぎり、左右に何川もひねると、ヘタの部分だけポロツとはずれるだろっ、これによってピーマン2袋で1本分のピーマンが活かされる・・・」O氏のドヤ顔が今でも思い出されます。
駄目なスーパーバイザーとは?
彼がはじめて臨店(=スーパーバイザーがお店に来店すること)したとき、ひと目みて「若い…」。そして、何より自信のない顔が印象的でした。
話を聞いてみたら、一昨年、新卒で本部に入社したとのこと‥・
「大丈夫かな?」と心配しましたが案の定、実際のスーパーバイジングもチェックシートをただ付けるだけで終わり、何のアドバイスも指導もありませんでした。
これじゃ本部に対する信用度が一気にさがってしまいます。
本部の人材不足とは言え、彼のような指導力でロイヤリティを支払うのは明らかに詐欺です。
フランチャイズ本部は本当にピンキリです。リスクを冒してまで開業したあなたにとって笑い話ではすまされません。
なので、本部選びはくれぐれも慎重にお願いします。